日常生活で補聴器や人工内耳を使いながら、地域の学校に通う聴覚障害のある子どもたちが増えています。補聴器や人工内耳はきこえにくい人にとって、音を認識するためにはなくてはならないものです。
では、音を認識するために必要な補聴器や人工内耳とはどのようなものでしょうか。
補聴器は、音を大きくして耳に伝えます。マイクで音を拾い、アンプで音を増幅します。増幅した音をイヤフォンで耳に伝えます。
詳しくは、こちらをご覧ください。(旧みみよりWEBページ)http://www.news.ed.jp/rou/mimiyori/HA/CI.htm
人工内耳は、音を電気信号に換えて聴神経に伝えます。そのため、頭部に体内装置(インプラント)を埋め込み、電極を蝸牛に挿入する手術をします。その後、電気信号を音として認識するための『音入れ』を行います。耳に装着した体外装置が、音を電気信号に変換して体内の電極に伝え、音として認識できるようになります。はじめは違和感があるようですが、聞く練習を行い慣れてくると、自然な音として認識されます。
詳しくはこちらをご覧ください。(旧みみよりWEBページ)http://www.news.ed.jp/rou/mimiyori/HA/HAsikumi.htm
補聴器 |
人工内耳 |
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機器の役割 |
音を大きくする。 |
音を電気信号に変える。 (聴神経を直接刺激する) |
きこえのイメージ (てんとう虫を聞こえに例えています) |
小さめで全体がぼんやりしたてんとう虫 |
大きいが目の粗い、カクカクしたてんとう虫 |
装用後の聞こえ(音の高さ) |
会話音を中心とした範囲 |
会話音を含む日常生活で使われる音を 中心とした範囲 |
装用後の聞こえ(音の大きさ) |
大きな話し声が聞こえる程度 (裸耳聴力によって異なります) |
普通の会話音が聞こえる程度 |
補聴器や人工内耳は、耳に機器を装着します。最近の補聴器は小型化が進んでいるので、耳の後ろに隠れてしまうタイプや耳穴にすっぽりと入ってしまうタイプのものもあります。人工内耳も小型化が進んでいますが、埋め込まれたインプラントに信号を送る体外装置がないと機能しません。
耳に届けられた音は、脳で解析され、経験から音の要不要を判断します。必要と判断された音は、意味のある音として脳で何という意味なのかを分析し、それに応じた行動をとることができます。不要な音として捉えられると、意味の無い雑音として処理されます。
補聴器や人工内耳を装用している人は、会話音から聞こうとする音を聞き分けるため、その音に集中しています。周りの音は、雑音=「無い音」として処理されます。そのため、「聞こえない」ことが分からないことがあります。
聞こえづらさは障害の程度や障害のある箇所によって個人差があります。そこで補聴器や人工内耳を個々の聞こえに合わせて、調整する必要があります。補聴器のフィッティングや人工内耳のマッピングは、1度でピタリと合わせる事は大変難しいものです。そこで、病院や補聴器店に何度も通い、納得する聞こえになるまで調整してもらう必要があります。
補聴器や人工内耳を装用していると、日常生活の1対1での会話は通じやすいため、互いに『聞こえている』と思うことも多いです。しかし、聞き間違いをしたり、誤って覚えてしまったりすることも多いものです。
大勢の中での話し合いやざわざわした中での会話は、補聴器や人工内耳での聞き取りが難しいものです。音源と聞く人の距離が離れると、さらに聞き取りは難しくなります。それを補うのが、補聴援助システムです。
聞くための環境が整っていても、補聴器や人工内耳を活用するためのきこえの練習が十分にできていなかったり、聞こえにくい自分というアイデンティティを意識したりして、補聴器や人工内耳を装着するのを嫌がる場合があります。聞こえることによって過ごしやすくなったり、新しい世界が広がることも多いです。補聴器や人工内耳を活用した聞こえを大切にして欲しいと思います。
補聴器や人工内耳を耳につけただけで、聞こえるようになるわけではありません。「聞こえの環境」を整えるとともに、本人の『きこうとする意識』を育てることも大切です。