聞こえにくい人をサポートするとき、次の3つのことがポイントとなります。
そのポイントは、「聞こえ」に配慮すること、「視覚情報」を活用すること、「周囲の理解」を得ることです。今回は視覚情報を活用するための配慮についてお伝えします。
聞こえにくい人は 、見ることで情報を補っています。どのように見ると情報が得られるかは、生活や学習の中で学んでいきます。複雑なものもしっかりと見て、生活の中でも活かせるよう、授業の中で見るポイントをしっかり学ぶことができるようにサポートしていきましょう。
顔や口元を隠さない |
顔の表情、特に口元は大切な情報の一つです。口の形や舌の動きを見ることで、あいまいな聞こえを補うことができます。知っている言葉だと聞きとれなかった音を推測して、会話の内容を理解する手がかりとすることができます。
話の流れや感情などをつかむために表情を見ることはとても大切です。顔を見えやすくするためには、顔が陰にならないようにする必要があります。野外などで光を背にして話すと、逆光になり顔が見えにくくなります。
また、プロジェクターを使った授業などで、室内が暗いと話者の顔が見えなくなる場合があります。事前に話す内容をまとめて紙面で渡しておくなど、工夫することが大切です。その場合、紙面を確認する時間と、スクリーンを見ながら説明を聞く時間を分けることが大切です。ある程度の明るさがある中で使用する場合、プロジェクターの光を浴びたまま話者が話さないように注意しましょう。光が明るすぎるため、話者の表情や口元が読み取りづらくなります。
会場が広い場合、話者の顔が遠すぎると、表情や口元が読み取れません。座席を話者の近くにするなど、見やすく聴きやすい席を確保するとよいでしょう。左右で聴力差がある場合や個人差があるので、本人に聴きやすさの確認をしてもらい、座席を決めるとよいでしょう。
事前に概要を提示する |
授業の際には、あらかじめその時間に行う活動を箇条書きで知らせておくと、指示が聴きとれなかったときに何をするか分かります。その時間に学ぶテーマを板書したり、使う教科書のページを始めに書いておく良いでしょう。話を見失ったとき、何の話をしているか検討がつけやすくなります。
新しく学ぶ言葉は、聴き慣れないため正しく聞き取れないことがあります。重要語句として板書されると、正しい読み方を確認することができ、正しく覚えることができます。
最近ではプレゼンテーションソフトや電子黒板を用いた授業も多く行われています。スピーディーに授業を進めることができますが、スライドが切り替わることで前の内容が消えてしまう側面があります。スライドの文章を読んでいる途中で切り替わったり、考えているうちに話が変わってしまったりすると、内容が理解できないことがあります。事前に資料を紙面やデータで渡しておくと、あらかじめ読んで予習しておくこともできますし、話の流れをつかみやすく理解しやすくなります。
視覚教材を工夫する |
音声のみの提示より視覚的な教材があると、イメージをつかみやすく分かりやすいものです。文章は読んで理解するまでに時間がかかりますが、図式化したものだと短時間でイメージをつかむことができます。図を用いて話の流れを表し、具体物や写真、モデルなどで提示されると分かりやすいです。
図形やグラフ、写真などを提示する場合は、簡単に見方や解説を加えてください。どのように見ると良いか分かると、理解が進みます。グラフや写真など、どこに注目するのかポイントを教えてください。特に図形はどの順番で見ていけばよいか指し示してもらうと、図をたどりながら聞き取ることができるようになります。
聞こえにくい人は話を聴くとき、音を聞き取ることに集中します。しかし、聞きとれない音や言葉があるとき、視覚的な情報が活用できると、ずいぶん話が聴きやすくなります。聞こえにくい人だけでなく、さまざまな場面に共通する伝わりやすくする工夫です。