前回に引き続き、自立活動の指導で悩まれている先生方へ、短時間でできる自立活動の第2弾です。生徒の実態に応じて、自立活動の時間や日々の生活の中で実践して欲しい内容を紹介します。
子どもが使う補聴器や人工内耳の取り扱いはどのようにしているでしょうか。補聴器や人工内耳の管理が自分でできるようになることは、とても大事なことです。聞こえなくなったら自分で電池を換え、不具合があった場合、どのような状態かを伝えることができるでしょうか。
補聴器・人工内耳の活用のためには、自身の使う補聴器・人工内耳の管理を知り、大切に使おうとする意識を育てていく必要があります。まずは、毎日の手入れについて学ぶことが大切です。
(1) 補聴器・人工内耳を清潔にする方法を確認する。
1) 補聴器・人工内耳をできるだけ分解して、柔らかい布でから拭きする。
2) フックやチューブ、イヤモールドなどは、中性洗剤をつけ洗い、乾燥させる。
※ 補聴器・人工内耳の電池ケースなど綿棒等を使って汚れをふき取る。
(2) 保管方法や、ぬれたときの管理のしかたを学習する。
1) 電池を外し、から拭きして乾燥ケースに入れる。
2) 電池は別に保管する。(空気電池は、乾燥ケースに入れると寿命が縮まるため)
3) 充電池は接点のから拭きをし、充電する。
※ 補聴器・人工内耳の手入れの仕方について動画を見ながら、具体的に指導してください。
(3) 学校用の保存ケースを、空きびんなどを利用して作る。
1) 空きびんをよく洗い、乾燥させる。
※ 外側を好きなようにデコレーションするのがおすすめです。
2) 中に乾燥材(シリカゲル)を入れ、スポンジをかぶせる。
※ 乾燥剤(シリカゲル)はガーゼや不織布の袋などに入れるなどして、補聴器・人工内耳と直に接することがないようにしましょう。まれに、イヤモールドの穴に乾燥剤のつぶが入り込み、取りにくくなることがあります。
保存ケースは購入したときのものだけでなく、プールや体育などで一時的に外すときのケースが必要です。故障の原因となる汗や湿気などを防ぐためにも乾燥できるものがあるとよいでしょう。自分の補聴器・人工内耳に愛着を持ち大切に扱うために、保管ケースを手作りすることを学習として取り入れるとよいでしょう。
補聴器や人工内耳が正常に作動しているか、また適した音で聞こえているかをチェックしましょう。聴器や人工内耳の必要性を感じていない場合、電池が切れていてもそのままにしてしまう子どもがいます。故障や電池切れを防ぎ、常に聞き取りやすい状態にしておけるようにしましょう。
(1) 補聴器をステゾスコープやチューブにつなぎ、実際に聞こえるかどうか確認する。
(2) 口元を隠して、音を聞かせ、聞き取れているか確認する。
※ 使う音は、「ア・ウ・イ・ス・シ・ン【発音記号については、PDFファイルをご覧ください】」を聞かせましょう。日本語の会話音の中の高音から低音までの大枠をチェックすることができます。
1~6までの数字には、様々な音が含まれており、聴きなれたことばや文章は、ことばの音韻や韻律、話の前後を頼りに、聞き取ることができるものです。突然「ゴ」と言われてもその意味が分かりませんが、「イチ、ニ、サン、シ、ゴ」と言われると、序数詞の「5」だと分かります。
一つ一つの序数詞は聴きなれたことばで、連続した序数詞は予測しながら聞き取ることができるものです。序数詞を使って、簡単に聞き取りの傾向がつかめ、練習に活用できます。
(1) 数唱音数え
口元を隠し(または後方から)、1~6までの数字を、1つの数字につき1秒程度で発声し、聞こえた音を指で示させる。
1) はじめは、1~6まで連続した数(「1・2・3・4・5・6」)と言い、確認させる。
2) 次のどれかを言い、指で示せたか確認する。
「1・-・-・-・-・-」「1・2-・-・-・-」「1・2・3・-・-・-」「1・2・3・4・-・-」「1・2・3・4・5・-」「1・2・3・4・5・6」
(2) 数唱聴き分け
1) 口元を隠し、1~6の数字をランダムに発声し、聞こえた音を指で示させる。
「1」「2」「3」「4」「5」「6」
2) 「1」以外の数を発生した場合でも「1」を示した場合は、ランダムに言うことを確認して聞き分けるよう促す。
※ 「数唱音数え」に「数唱聴き分け」を続けて行うと、聞き分けができていない場合「1」から始まると思い、「1」以外の数の時も同様に「1」を示してしまう場合があります。他の数と「1」を聞き分けができる確認しましょう。
「1」は「イ・チ」という2つの音から成り立つので2音節となり、「2」は「ニ」なので1音節です。音節の区切りがあいまいだったり、子音が聞き分けづらかったりすると「1イチ)」「2ニ」「4シ」を混同することがあります。
一方、「3サン」「5ゴ」「6ロク」は子音や母音が他と違いが分かりやすいものです。
普段聴き分けができているのに、数唱を指で表せない場合は、補聴器や人工内耳の電源が入っているか、電池が切れていないかを確認しましょう。また、体調不良で聞き取れない場合もあるので注意が必要です。
(1)の数唱音数えでは、最初の「1イチ」を聞き逃しても、次の数唱からずらして数えることができる場合は、追従できたと考えられ、音の拍数やリズムが分かると考えてよいでしょう。音声にあわせて数字を示すことができない場合は、前回提示した「まずはここから~簡単な自立活動1」を参照して、言葉の音韻と韻律の指導をするとよいでしょう。
(2)の数唱聴き分けでは、どんな音が聞こえるか(音の識別)を確認できます。個々の数唱の違いに気づかない場合は、音韻の違いが分かるか、母音が弁別できるか、子音が弁別できるかを確認しましょう。難しい場合、カード(絵や文字を書いたもの)を指し示しながら発音し、聞き分けを行う学習を行いましょう。
☆ 「イラスト入りA4版」5 まずはここから自立活動 2[PDFファイル/457KB]では聴き分けチェックのチャートがあります。参考にしてください。
<間違いの具体的なレベル>
区別できなかった例 |
音韻数が分かるか |
母音が弁別できるか |
子音が弁別できるか |
1〔イチ〕,3〔サン〕,5〔ゴ〕 |
× |
× |
× |
1〔イチ〕,3〔サン〕,6〔ロク〕 |
〇 |
× |
× |
2〔ニ〕,5〔ゴ〕 |
〇 |
× |
× |
1〔イチ〕,2〔ニ〕 |
× |
〇 |
× |
2〔ニ〕,4〔シ〕 |
〇 |
〇 |
× |
☆ 「4」について
聴き分けが難しい場合、日常生活でも「4」を「ヨン」と発音するようにすると、聞き間違いを防ぐことができます。